炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の環境負荷が増大する中、その削減に取り組む企業の事例を紹介します。
CFRPの需要はますます増大
CFRPは今や、航空宇宙や自動車産業などの分野であらゆる用途に使われるようになりました。剛性、耐腐食性、強度重量比などに優れており、鋼鉄、木材、アルミニウムなどの従来材よりも良質な素材として置き換えられることも増えています。CFRPは価格が下がるにつれ販売量が拡大しており、その需要は2025まで毎年約7.5%増加すると予測されています。1
CFRPの環境負荷を減らす取り組みが求められている
残念なのは、CFRPの製造には大量のエネルギーを必要とする上に、かなりの廃熱や排出物、産業廃棄物を発生させる点です。さらに使用済みのCFRPコンポーネントのほとんどはリサイクルが難しくコストもかかるため、焼却か埋め立て処分されているのが現状です。CFRPの生産と廃棄量が増えることで環境への悪影響が深刻化しており、特に温室効果ガスの観点からより厳しい環境規制を求める動きにつながっています。欧州では2025年から年80,000トンのCFRPリサイクルが義務付けられることになっています。2
炭素繊維の製造廃熱をリサイクルするドイツのエネルギー企業Veolia
ドイツのHeinsbergにあるOberbruch工業団地内の企業は、エネルギー事業者のVeoliaの革新的な施策により、エネルギー、水道、廃棄物処理のサービスを効率的かつ手頃な価格で享受しています。Veoliaは敷地内にあるTeijin Carbon Europeの炭素繊維製造施設の廃熱を周辺の企業の給湯に再利用するなどの取り組みで高い評価を得ています。3この熱再利用システムは年間約1,600トンのCO2排出量抑制につながり、これは約1,000台のディーゼル車が毎年10,000キロを運転した場合の排出量に相当します。このシステムはその省エネ効果とドイツ連邦経済エネルギー省の助成金によって完全に採算が取れる見込みで4、イノベーションが環境と経済を両立させた好例となっています。
富士加飾と帝人が再生炭素繊維からCFRを共同生産
CFRPは従来の化学的、機械的、熱的手段によるリサイクルが困難でコストもかかります。富士加飾は、使用済みCFRPから母材となるプラスチックを取り除き、高品質な炭素繊維を取り出すことができる精密熱分解法という独自技術を持っており、この技術はCO2排出量が少ないのが特徴で、新しい原料から炭素繊維を生産する場合に比べ、CO2排出量を1/10に抑えることができます。帝人は富士加飾と2022年2月に提携、今後、両社は温室効果ガス排出量の削減に向け、リサイクル炭素繊維を使用した製品の生産・供給体制を構築し、商業化に向けた取り組みを推進します。環境省からも環境負荷5低減の可能性を認められ、関連施設への助成金を受けています。
環境負荷の低減に向けて協働の輪を広げる帝人
先に挙げた2つの事例のように、このようなパートナーシップは顧客にとってより良いソリューションをもたらし、CFRPの環境への影響を効果的に低減し、各国政府の支持も得ることができます。帝人は常にコラボレーションを望む企業に門戸を開いています。相互に有益な関係を築きつつ、ともに地球環境の改善に取り組みませんか。
Links
1Recycling of Carbon Fiber-Reinforced Composites—Difficulties and Future Perspectives
2Ensuring circularity of composite materials (Processes4Planet Partnership) (RIA)
5Teijin to Partner with Fuji Design in Carbon Fiber Recycling