“CircuLite”が生み出す循環型経済システムとは?
2021年に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議 (COP26)にて、「グラスゴー気候合意(Glasgow Climate Pact)」が合意されました。この合意は、産業革命前からの気温上昇幅を1.5℃に抑えることが目標として明記されており、この目標に向けた脱炭素への取組みがより一層重要になってくるものと考えられます。こうした状況の中で、脱炭素社会実現に向けて、日欧共同研究から生まれたスタートアップ企業が興味深いアプローチを行なっています。
AC Biode社は、日-欧の研究から生まれたクリーンテック系スタートアップで、化学、電子工学および材料科学の分野で専門性を有しています。AC Biode社は、バイオマスの灰、石炭の灰、下水廃棄物の灰、およびリチウムの副産物をアップサイクリングし、そこから吸着剤または抗菌素材を生み出しています。その一部は大気中からの二酸化炭素の回収にも使用できるとのことです。
バイオマス発電、石炭火力発電、または下水の汚泥から発生する灰が問題となっています。その灰を処理し、また重金属対策を行うには、数百万米ドルのコストを要します。一方でその灰をコンクリートまたは土壌改良剤にリサイクルにしてもあまり利潤が出ず、そのため、灰のほとんどは埋め立て処分とされている現状です。
脱炭素社会実現に世界が歩み続けている一方で、今後20年にわたって、石炭は世界で最も多く発電に使用される燃料であり続けます。石炭による発電から生じた数百万トンもの灰が埋め立て処分されている現状において、発電所は年間数億ドルの出費となり、また同時に年間数千トンもの二酸化炭素が発生する原因にもなっています。こうした問題に対し、AC Biode社の技術によって、石炭の灰またはバイオマスの灰をCircuLiteという新素材にリサイクルすることが可能になります。これによって、発電所はカーボンフットプリントおよびコストを下げ、循環型経済システムを生み出すことができるようになります。
AC Biode社が目指す灰のアップサイクリングを通じた循環型経済が、脱炭素社会の実現に大きく貢献するかもしれません。