女性特有の健康課題を解決し、女性がより働きやすい社会を目指す
2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」では、ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを推進することが掲げられています(目標5)。1
国際社会においてはジェンダー主流化が進み、女性たちが体の悩みや健康の問題をオープンに語り、解決していくことで女性がより健康的に働きやすい社会を目指す動きが高まっています。
そのソリューションを提供するビジネス「フェムテック(FemTech)」(「女性=Female」+「テクノロジー=Technology」)の市場は年々拡大しており、米国のコンサルティングファームのフロスト&サリバンの調査では、その市場規模は2025年には世界で5兆円超(500億ドル)にまで成長すると見込まれています。2
女性の目線で作られたフェムテックの製品やサービスは日本でも受け入れられており、多くの企業がフェムテック市場に参入しています。帝人もそのひとつとして、女性に寄り添い、悩みを解決するソリューションを提供する取り組みを行っています。帝人は女性特有の健康課題にどのようにアプローチしているのでしょうか。
食品が持つ機能以上の効果を引き出す機能性食品素材
帝人は「人生100年時代」を迎える日本人の健康寿命の延伸を課題と捉え、疾病に対する治療領域だけでなく、日常的に健康状態を保つ予防領域の研究開発を進めています。
「私達は、体全体の健康に影響を与えるといわれる腸の健康を支えるため、2016年にヘルスケア新事業に機能性食品素材事業推進班をスタートさせました」とヘルスケア新事業部門 ビオリエ事業部 プロバイオティクス プロダクトマネージャーの山田克樹氏は話します。
機能性食品素材とは、食品に含まれている健康機能を有する栄養素や機能性成分の総称です。ビオリエ事業部では機能性食品素材のなかでも、病気の予防、健康増進のカギと考えられる腸内環境を整えるプレバイオティクス素材(食物繊維など)とプロバイオティクス素材(乳酸菌など)を主に取り扱っています。

山田克樹氏
同ヘルスケア新事業部門 ビオリエ事業部 管理栄養士の鵜篭留依氏は「食事の摂取が人の健康を保持・増進することはご存じの通りです。それにプラスアルファして様々な機能を有する食品素材を上手く活用することは重要だと考えています」と説明します。
「ビオリエ事業部では、『生まれた日からさいごの日までいい日に』というテーマのもと、帝人が素材と医療の開発で培ってきた技術と知識を注ぎ込み、食品素材のポテンシャルを最大限に引き出すことで、『クォリティ・オブ・ライフの向上』に取り取り組んでいます。誰もが当たり前に、美味しく自然な食事によって健康的な生活をおくることができる社会を実現しようとしています」(鵜篭氏)

鵜篭留依氏
女性のために開発された腟内フローラ専用の乳酸菌
「女性はライフイベントやキャリアを考えた際、女性特有の悩みが重なり、思い通りの方向に進めない、場合によってはキャリアを諦めざるを得ないといった課題もあります」(鵜篭氏)
ビオリエ事業部が着目したのは女性特有の臓器である膣でした。女性が膣に向き合う時期は、ライフステージのなかで何度かあります。最初は生理を迎えるとき、次に妊娠をしたとき、そして更年期を迎えたときなどです。膣は子宮とつながる臓のため、膣が感染を起こすと子宮内膜炎などのリスクにつながりかねません。すると妊娠期であれば早産や流産のリスクを抱えてしまいます。こうしたことは、女性の能力を伸ばし、可能性を広げることの妨げとなります。
「私自身そうだったのですが、女性の膣が重要だと言われても、なぜ、重要かはあまり理解されていないと思います。また、膣はデリケートな部分なため、女性自身に悩みがあってもなかなかオープンにはできないと、これは私たちの調査でも確認できた声で、隠れていた問題を把握しています。」(鵜篭氏)
こうした悩みに対するソリューションとして2020年にリリースされたのが「乳酸菌UREX」です。
「腸で働く生菌体である乳酸菌やビフィズス菌はよく知られていますが、乳酸菌UREXは膣でも働くとてもユニークな乳酸菌です」(鵜篭氏)
人間の腸や口腔内、皮膚などさまざまなところで常在菌が健康維持のために働いています。女性の膣にも常在菌があり、膣内フローラを構成しています。膣内は腸と同じく、善玉菌と悪玉菌の両方が存在しており、女性自身の自浄作用によって常にバランスが整えられています。しかし、疲れやストレス、生理周期など、いろいろな要因で膣内の細菌叢のバランスが崩れると、治療が必要な疾患になることがあります。
乳酸菌UREXは膣に乳酸菌を届けることで健康なバランス状態を維持しようとするものです。
バランスが崩れる前にしっかりと乳酸菌を摂取する
「乳酸菌UREXは、膣内で働く菌を厳選し、2種類の菌株をブレンドしています。膣内は腸と違い、膣に存在する菌の種類は限られており、菌層の種類が非常に少なく、特定の菌が働くという特徴があります。乳酸菌UREXは膣内に定着しやすく、酸を出してアルカリ性から酸性に傾かせるという働きをします。そのことで膣内の細菌叢のバランスを整えることができます。また、他の乳酸菌に比べて膣内での滞在時間が長いことが分かっています」(鵜篭氏)
医師から健康と判断された平均35歳の女性(59人)をランダムに2つの摂取群に分類し、乳酸菌1日10憶個のUREXを60日間継続摂取した臨床試験では、乳酸菌UREXを継続摂取した女性は、膣内フローラの乱れた状態が改善されたという結果が出ています。3
また、細菌性腟症のリスクが低い女性(48人)を2群に分け、乳酸菌UREX20憶個/日摂取群と摂取しない群で60日間継続した試験では、乳酸菌UREXを継続摂取した女性は、膣内フローラの良い状態が継続していたという結果も出ています。3
乳酸菌UREXは、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が主催する「食と健康アワード 2022」において準大賞(素材・成分部門)を受賞しました。女性の健康に貢献できること、そして膣内フローラという新規性が高く、今後の健全なフェムケア市場の形成に期待できる点が評価されました。
女性に寄り添い、悩みを解決するソリューションを提供していく
乳酸菌UREXは2004年にカナダで発売され、現在は世界50か国以上で使用されています。日本では2020年にリリースされたばかりですが、帝人は女性の健康増進に取り組む食品企業と一緒になって普及に努めています。
「まだ腟内で働く乳酸菌の認知が低く、市場としては黎明期だといえます。しかし、腟内フローラに関心を寄せられる女性は多く、食品メーカー様を通じて喜びの声などはいただいています」と山田氏は笑顔を向けます。
「膣という臓器がどれだけ重要なものなのかを粘り強く啓発活動を続けることで乳酸菌UREXを育てていきたいです。乳酸菌UREXを通して、女性の課題に寄り添い、これまで女性のなかでもタブー視されて来たクローズドな領域を前向きでオープンな市場にして行きたいという想いがあります」(鵜篭氏)
「私達は、女性に関わる健康に取り組んでいる医療関係の先生方にお力添えをいただきながら、安心安全で機能性を備えたエビデンスもしっかり示していく考えです」(山田氏)
女性に寄り添い、そっと背中を押せるような素材や製品をつくって解決策となるソリューションを提供することがフェムテックに関わる企業の使命だと両氏は熱く語りました。
帝人は、2022年10月20日(木)~22日(土)の日程で開催される第1回「Femtech Tokyo」(東京ビッグサイト)4に「乳酸菌UREX」を出展します。
※注:乳酸菌UREXはクリスチャン・ハンセン社の登録商標です。帝人は、世界的なバイオサイエンス企業であるクリスチャン・ハンセン社(デンマーク)と日本における健康食品用途および育児用調製粉乳用途へのプロバイオティクス原料の販売代理店契約を締結しています。
関連リンク
- 持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/SDGs_pamphlet.pdf - FEMTECH Digital Revolution in Women’s Health
https://www.frost.com/files/1015/2043/3691/Frost__Sullivan_Femtech.pdf - プロバイオティクス原料 乳酸菌UREX
https://teijin-probio.jp/urex-2/ - FemTech Tokyo
https://www.femtech-week.jp/hub/ja-jp.html