近年、頻発する自然災害。完璧に予測することは不可能で、かつ甚大な被害をもたらす災害は、必ず起こるものとして備えなければならない。その備えとして注目されているポータブル水素燃料電池を解説する。
自然災害だらけの「奇跡の惑星」
時折、地球は「奇跡の惑星」と表現される。宇宙広しといえど、唯一であるこの豊かな自然と生命が息づく惑星は、奇跡的なバランスで生まれ、そして今現在まで脈々と続いているという。しかしそんな奇跡の惑星も、良いことばかりではない。地球上に生きている限り、私たちは自然災害から逃れることはできないのだ。それを感知できるかどうかに関わらず、今も地球上のどこかで、何かしらの自然災害は起こっている。
災害の発生は予測不可能で、時に人智を超えた被害をもたらす。国の文化や経済に関係なく、地域や気候に応じるような災害が発生する。米国のハリケーン、日本の地震と水害、オーストラリアの山火事といった具合である。
気候変動による災害発生が問題視されているが、原因と同じくらい大切なのは、災害への対応策だ。そんな中、頻発する自然災害に対する備えとして近年注目されているのがポータブル電源である。
ポータブル電源の現在地
ポータブル電源とはその名の通り、持ち運びができる電源装置である。災害が起こり、主電源が損傷してしまったり、電力が届かない、もしくは十分ではない場所に避難しなくてはならなくなった場合などに電源として用いられる。また、災害時だけではなく、キャンピングやアウトドアスポーツでも使われるなど、用途は広い。
そんなポータブル電源にはいくつかの種類がある。あらかじめ充電しておいて使用できるもの、小さな太陽光パネルがついていて野外で充電しながら使用できるもの、そして水素燃料電池(FC)などだ。
特にポータブルFCはBCPの観点だけではなく、新たな電源としての可能性にも着目されている。
災害対策だけではない、ポータブルFCの可能性
ポータブルFCの特長としては、なによりも環境調和性が高いことが挙げられる。水素と酸素の反応でエネルギーを発生させるため、排出されるのは水蒸気のみだ。環境問題やエネルギー問題を解決してくれる新たな一手として、期待されている。また、水素と酸素の反応が直接エネルギーに変換されるため、エネルギー効率が高いという点もある。さらにリチウムイオン電池と比較すると体積あたりのエネルギーは水素の方が大きく、装置本体の軽量化もできるというのがポイントだ。軽いものだと10~20kgというモデルもあり、用途もその分広がっている。
起こってから対策していては遅いのが、自然災害だ。自然災害はいつか必ず起こることを前提として動かなければならない。それが企業や自治体の社会的な責任だといえる。ポータブルFCを中心に据えた災害への備えとシミュレーションをしてみてはどうか。