炭素リサイクル技術で挑む、化石資源の利用削減と持続可能な社会への貢献
皆さんにとってガソリンや軽油などの輸送用燃料が化石資源から作られ、環境汚染の原因となっているのは明らかなこととして知られていますが、化石資源が使い捨て製品としてほぼあらゆる場所に生活の一部として存在していることを深く知る方はまだそれほど多くないかもしれません。衣料品、家庭用品、洗濯用洗剤、食品パッケージ、電化製品など、今日使われているこれらの製品や素材のほとんどは化石資源由来です。地中から石油として掘り起こされ、大規模なプラント施設で生成と加工が行われ、世界中に輸出されています。しかしながらこれらの製品は、生産されたものを使用後廃棄するのみという一方向な状態になっています。リサイクル率が上昇しているとはいえ、過去に生産された全プラスチックの約90%はリサイクルされてこなかったことが分かっています。そのような状況にもかかわらず、私たちは止めることなく地中から可能な限り炭素を生み出す化石資源を掘り起こし、使い捨てを繰り返しているのです。これは環境にとって大きな問題です。更に化石資源の利用により発生する温室効果ガス、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、および微粒子状物質は、世界中で排出され続けており、温暖化や子どもたちの呼吸器疾患の増加につながっています。
Lanza Tech社は、この豊富な排気ガスを新しいチャンスと捉え合成生物学、バイオインフォマティクス、人工知能、および機械学習に関する専門知識とエンジニアリングを組み合わせて、廃炭素を新しい日用品に変換するプラットフォームを作成しています。また同社はガス回収・リサイクルプロセスを活用し、最初の商業規模のガス発酵プラントにおいては、これまでに2,700万ガロン超のエタノールを生産しており、これは1.3億トン超のCO₂を大気から取り除いたことに相当します。現在世界各地でプラントを建設中です。
同社の炭素リサイクル技術は、排気ガスのビール醸造場版と表現することが出来ます。ビールは糖分や酵母を発酵させて作りますが、排気ガスは汚染物質をバクテリアや微生物によって燃料や化学物質に変換するのです。同社の技術を活用する事で工業用排気ガス(精錬、鉄鋼、合金鉄)、分別されていないリサイクル不可能な都市廃棄物、バイオマスの廃棄物や残留物など多くの廃棄物に対応することができます。そしてこれらの廃棄物を、ジェット燃料を含む燃料や、30種類以上の化学製品に作り変えることができます。この様に炭素を多く含む排気ガスを回収・リサイクルすることで、地域の空気の質が大幅に改善されるだけでなく、現場での持続可能性を推進しながら新たな収益源を生み出すことができるのです。
さらに、Lanza Tech社は、化学業界のサプライチェーンについての考え方も変えようとしています。現在、すべての化学製品は、糖類や石油などの一次産品から製造されています。こうした原料の価格は常に変動するため、化学製品の調達や供給は不安定になります。ガス流は簡単に取引できないため、これを原料として利用することで、コモディティ化学製品をこうした価格変動から切り離すことができます。今日、私達は、フェアトレードのコーヒーやオーガニックミルクを購入するという選択をすることができます。
同様に石油などの化石燃料から生成された製品なのか、それとも排気ガスからリサイクルされた製品なのか、私たち消費者が選択できるようになる日も近づいています。それは、炭素が使い捨てにされず、地上の炭素はリサイクルされ、化石燃料は地中にとどめておくことに繋がり、地球を再び綺麗な状態に保つことができるということです。
Lanza Tech社は米国イリノイ州に本社を置き、200名を超える従業員を擁しています。詳細については、ウェブサイトをご覧ください。