CSRから関連ビジネスの創出・育成の推進へ
2020年から21年に掛けて、カーボンニュートラル(CO₂排出ネットゼロ)の実現に向けた取り組みが一気に加速しました。現在の取り組みは、実現可能な無難な目標ではなく温暖化対策として実現すべき目標を掲げている点、脱炭素時代の社会システムの構築に向けた具体的な投資計画を描き、巨額の予算を確保して取り組む点で、これまでよりも格段に本気度が高まっています。
例えば、欧州委員会は、10年間で官民合わせて1兆ユーロ(約120兆円)を、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)などを後押しするインフラ整備に投資します。最大のCO₂排出国である中国も、2060年のカーボンニュートラル達成を目指すことを表明。第2位の米国も、バイデン政権がクリーンエネルギーなどのインフラ投資に4年間で2兆米ドル(約200兆円)の投資を公約に掲げています。
そして日本では、昨年の2020年10月、菅義偉前首相が2050年でのカーボンニュートラル達成を目指すことを宣言。経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。各企業の脱炭素化の取り組みは、これまでの社会的責任を果たすためのCSR活動から、関連ビジネスの創出・育成の推進へと完全に色彩が変わったのです。
この目標は、小手先の省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用などでは実現不可能な高い目標です。その実現には、エネルギーの取得・活用の抜本的転換と、技術的ブレイクスルーが必要になります。なかでも、これまでにも増して再生可能エネルギーの活用をより早く、より広範な領域、より大規模に進める必要が出てきています。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、これまで各国や地域が掲げていた再生可能エネルギーの活用促進目標を積み上げた値(Planned Energy Scenario :PES)は、2018年時点で26%だったものを、2030年時点で38%に、2050年時点では55%に高めるというものでした。ところが、エネルギーの消費増分を勘案し、2050年カーボンニュートラル実現から逆算して目標(Transforming Energy Scenario :TES)を定めると、2030年には57%、2050年には86%まで上積みする必要があることが分かっています。現在、日本で発電している総電力量のうち、再生可能エネルギーは約20%にすぎません。目標値がいかに高いハードルであるかが分かります。
企業でもこれまで以上に積極的に脱炭素化に取り組む動きが目立っています。例えば、工場やデータセンターなど莫大な電力を消費する施設では、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄う「RE100プラットフォーム」を導入する企業が増えてきました。RE100とは、再生可能エネルギーと大容量ESS、水電解、大容量の定置向けFCシステムを組み合わせて、莫大な電力を自給自足し、安定活用できるようにするものです。
RE100の取り組みには大企業が参加し、EUでは化石燃料を利用した事業活動による輸入製品やサービスに課税する国境炭素税を2026年から導入する予定です。RE100の取り組みに際立った実利が生まれる可能性があり、そうなれば、この動きは一気に加速することでしょう。