環境問題の解決で果たすべき企業の役割
インド洋の島国、モーリシャス共和国。海や山など美しい自然が豊かで「インド洋の貴婦人」と称されるリゾート地として知られています。このモーリシャス沖で2020年7月、日本の貨物船が座礁し、燃料の重油が流出。周囲のサンゴ礁やマングローブ林などを汚染し、貴重な生態系に影響を与えかねない事故が発生しました。
モーリシャス沖の事故から、企業に求められる「責任」について考えてみます。
座礁事故を起こしたのは、商船三井がチャーターした岡山県の船会社所有の貨物船「WAKASHIO(わかしお)」。報道によると、貨物船の重油タンクが破損したことで約1,000トンの重油が海に流出しました。
座礁付近には湿地保存に関する国際条約「ラムサール条約」の指定地域が2カ所あり、さらにサンゴ礁への影響やモーリシャスの経済、人々の健康が危惧され、モーリシャス政府は「環境緊急事態」を宣言して国際的に支援を求めました。
環境への影響を最小限に抑えるには重油の早期回収が急務です。しかし、油処理剤を使用するとサンゴ礁を傷つけてしまう恐れがあります。そこで人の手によって始まった重油の回収ですが、その作業は難航しました。
この座礁事故の責任問題については、船舶の燃料流出による汚染損害の民事責任に関する国際条約「バンカー条約」では、船主が責任を負うことになります。商船三井には法的責任はないことが通常です。しかし、同社は企業の社会的責任を負うことを表明しました。
いま、将来にわたり地球環境を維持するため、世界中でさまざまな立場にある人々がSDGs(持続可能な開発目標)の達成に取り組んでいます。そうした中、企業の果たす役割とは何でしょうか?
それは、企業が持つソリューションやテクノロジーを活かした貢献です。さらに、企業間でお互いのソリューションやテクノロジーで補い合い、協業してSDGs達成を目指すことでもあります。モーリシャス沖での座礁事故では、油除去に取り組む商船三井を支援するため、自重の約20倍の油を吸着でき、ちぎれにくく、油のふき取り作業も可能な特徴を持つ、ポリプロピレン繊維の特殊な不織布が緊急提供されました。これは、帝人グループが展開する高性能油吸着材で、500kg(油吸着量約10トン分)が商船三井を通じてモーリシャス共和国政府へ寄贈されたのです。座礁事故から1年が過ぎ、流出した重油約1,000トンの大半は回収され、青い海が戻ったといいます。
特殊不織布サイト(外部リンク)
https://www.unisel.co.jp/product/functionality/olsorb/